イベント体験レポート

【2021.12.18 MEETUP! SAGA 伊万里編】〜商人が集い、互いに手を取る伊万里の暮らし〜

移住者と地元の人とのつながりの場をつくる、移住・定住イベント「MEETUP!SAGA(移住者の集い)」。
今年度第三弾を令和3年12月18日(土曜日)に伊万里市にて開催いたしました。
主催の特定非営利活動法人灯す屋様より、当日のイベント体験レポートをいただきましたのでご紹介いたします。


2021年12月18日(土曜日)。

前回の吉野ヶ里編から2週間。
今年度のMEETUP! SAGA最終回は、伊万里からお届けします。

伊万里といえば、みなさんは何を思い浮かべますか?

伊万里焼?造船?・・・思い浮かべるものは人それぞれですね。

歴史的にみると、伊万里は商人のまち。江戸時代には有田焼の積出港として機能していました。

そんな伊万里には今どんな人々が集まっているのでしょうか。
伊万里の今にダイブしてきました。

ストーリーが集まる、心温まるまちの発信拠点へ集合。

集合はPM2:00。最高気温は5度と、前日から一段と寒くなったこの日。
集合場所である伊萬里百貨店の中に、続々と防寒具に身を包んだ参加者の方が集まって来ました。

今回の案内人は、地域商社伊萬里百貨店の代表を務める、村上武大さんです。

伊万里の玄関口である伊万里駅。その1Fにある伊萬里百貨店を運営し、伊万里のヒト・モノ・コトの魅力を編集し、全国へ届けておられます。

 

実は村上さんは神奈川県の横浜市出身。2006年から本業であるHP制作会社の仕事で伊万里を調べ始めたことが、伊万里のまちづくりに関わる原点となったようです。
なぜ自分がやるのか、という問いを常に意識し、まちに関わっておられます。

「さあ、お天気も良く・・・極寒です!笑」
この言葉を皮切りに、まちあるきスタートです。うぅ・・・寒い!!

伊萬里百貨店を出てすぐ、なんと伊万里市観光協会会長の早田さんが駆けつけてくださいました。
早田さんと村上さんは、今はNPO法人まちづくり伊萬里の代表理事と副理事という関係。
村上さんが伊万里に引っ越してくる前から、早田さんは伊万里のまちに関わられています。


 
「とても面白いまちですので、ぜひ楽しんでくださいね。」と一言。
期待に胸が高まります。
こんなにも寒い中、ありがとうございました!

伊万里の真相に迫るまちあるきSTART!

私たちがいるのは伊万里駅の足元。歩道には陶片が埋め込まれ、他の通りとはまた一味違う通りになっています。
実はこの伊万里駅は、明治初期の船から鉄道に輸送が変わる頃、陶器商人の方々が自分たちでお金を出し合い、有田―伊万里間を結ぶ伊萬里鉄道として私鉄を開設したことが始まりだだそう。
その後、運営は国鉄に変わりますが、地域で団結し一つのゴールに向かう姿勢があったことが感じ取れます。


 森永製菓の創業者である森永太一郎が若い頃の銅像。
アメリカ時代に体づくりに没頭したことが、今のinゼリーという商品に繋がっているという噂も。
また、森永太一郎はキャラメルに使う牛乳を大量に入手するために乳牛を育成。当時はそれに止まっていましたが、その畜産のインフラがそのまま伊万里牛の飼育に活かされているとのこと。

大人数で街を歩いている様子は伊万里の方からするとなかなか珍しいことのようで、車の中から熱い視線が送られます。
「ジーッと見られた場合は手を振りましょう!笑」
そんなユーモアのある村上さんの一言で笑いに包まれました。

北に歩いていくと、すぐに【駅通り商店街】に到着。
この通りは焼き物の積出が船から鉄道に変わった時にできた道で、伊万里でできた最初の商店街とのこと。

そして、ふと上を見上げると、提灯がかかっています。
これは、伊万里の商工会議所青年部さんと飲食店組合さんがコロナ禍でも飲み屋街を盛り上げようと共に制作したもの。
実はこの提灯に描かれている焼き物の文様は、職人さんが一つ一つ手書きで描いているというのだから驚きです。一つ一つ想いがこもっています。

左手側に佐賀銀行伊万里支店が見えてきます。

今は伊万里支店ですが、元々は”伊萬里銀行”として建てられたものです。
大きな取引に必要な手形を発行するために当時の商人の方々が出資し合い、1882年に伊萬里銀行として、佐賀県内で最初の銀行として設立されました。
なんと佐賀銀行の歴史を辿ると、この伊萬里銀行の設立に端を発しているとのこと。
伊万里の先進的な取り組みが、今の佐賀県民の生活を支えているんですね。

佐賀銀行伊万里支店の手前の道から左に入り少し歩くと、風情のある建物群が現れます。

江戸期の風景を感じられる貴重な白壁土蔵の建物が並んでいます。伊万里市の景観指定地区に指定されており、通りに面している建物の面が一列になっていないことが特徴です。

ここで村上さんからクイズ。
「なぜ斜めに面が並んでいるのかわかりますか?」
これは難しいクイズです。

答えはこちら。
ここは取引のまちだったため、荷車を斜めに駐車することで通路の幅を確保するためだったのだという。
ここがいかに人通りが多かったのかを伺うことができます。

 伊万里川に架かる橋を渡り、対岸へ。

LIB COFFEE IMARIはどうやらとても賑わっています。
残念ながらオーナーの森永さんのお話は伺えませんでしたが、村上さんが案内を続けます。

LIB COFFEE IMARIの隣には伊万里朝市協同組合があります。
4年前までは閑散としていたようですが、LIB COFFEE IMARIのおかげで人が集まるようになったとのこと。

元々朝市に出店していた八百屋さんや餅屋さんの流れを汲んだ店舗が、再び集まってきておりオープンを控えているのだという。今後も目が離せないエリアですね。

陶器商人が全国に向かうための積出港として機能していた伊万里川。
ここから陶器を積み出していたようです。
そして、商い先でその土地のものを買い付け、伊万里に持って帰ってきていたとのこと。昔の伊万里は全国からものが集まる夢のような場所だったようです。

すぐ近くの【古伊万里通り商店街】を歩いていると、石見や伊予、丹後という他地域の文字が入っているお店が目に入ってきます。これは、陶器商人が全国各地で陶器を売りさばいた後、全国各地で買い付けてきたものをこの地で売っていたことの名残。
日本各地と繋がっていた証が今も残っており、様々な土地のものを受け入れることができる受け皿があるのだと感じられました。

伊万里のことで知らないことあるんですか?と言いたくなるほどの情報量を携える村上さん。
笑いながら「自分のことが一番わかりません。」と深い言葉を残し、さらにまちを練り歩きます。

この商店街を歩いていると伊萬里まちなか◯◯番館の文字が見受けられます。
冒頭に登場してくださったまちづくり伊萬里の代表理事の早田さんが、エリアリノベーションの手法(点となる店舗を多く作っていき、面で地域を盛り上げていく方法)を取り入れ、番館構想を推進しているとのこと。
現在はまちなか二拾番館まであり、どんどん空き店舗が再生され若い人が入ってきているのだという。今の時代に空き家がどんどん再生されているなんてとても凄い!!


古伊万里通り商店街を抜けると、【中町観音通り】。
終点近くのFUSEさんにお邪魔しました。映像制作や写真撮影をメインとし、イベント企画なども幅広く手がけておられます。
FUSEさんは、毎月第3土曜日に長崎県松浦市のアンテナショップとして【松浦マーケット】を仕掛け、伊萬里まちなか一番館の定期市である【さんどいちば】と連携してまちを盛り上げています。


隣町の松浦に住みながらも、ここ伊万里に店舗を構えたというオーナーの川浪さん。(写真左)
伊万里に溶け込み、商店街を盛り上げ共に伊万里の文化をつくっていこうとする一員です。
どこに住んでいるかは関係なく、好きなまちで地域に関わっていく。そんな暮らしの可能性を感じられました。

そして、一行は座談会会場の伊萬里まちなか一番館へ。

自分にできない部分で助け合う、個性を活かす繋がり方。

第二部は恒例の座談会。自己紹介とまちあるきの感想から始まるのですが、村上さんのトーク力に惹き込まれたという声がちらほら。会場は笑顔で包まれ、場がほぐれていきます。

Uターンを検討していたり、伊万里のことをもっと知りたいと思ったり、繋がりをつくりたいという方が参加してくださっています。

司会はお馴染みの北川さんです。

スペシャルゲストとして、現在のまちなか一番館の館長の伊葉さん、館内の一角で【ポポカフェ】を営業している伊万里菓舗うちだの内田さん、先輩移住者として岩楯さんをお迎えしました。

赤いニット帽が伊葉さん。灰色のキャップが内田さんです。

北川さん「(まちあるきを終えて)職種も世代も横断して伊万里を盛り上げようという機運を感じられるんですが、どうなのでしょうか?」
村上さん「いい意味で縦の繋がりが強いですね。」
北川さん「繋がりが強くヒエラルキーがない、と?」
村上さん「そういうことですね。反応は見えないけど実は応援してくれてますね。」
北川さん「商人のまちの底力を感じられます。商売としても生きていけるように応援しあっているんですね。」

加えて、まちの中で役割分担ができているという。
早田さんのように地域の先輩方をまとめる人、伊葉さんのようにサブカルチャーが好きな人たちと繋がれる人、内田さんのように若い高校生と繋がれる人が存在し、何かしたいとなった時に、手を組める関係性がイメージしやすいようです。

話しは進み、、、「人だけはお金で買えない。」と村上さん。

近隣へ移住し、地元を盛り上げていくためにどうするか考えている、という参加者に対し、応援してくれる人や悩みを聞いてくれる人をつくっていくことからまず初めてみては、とアドバイス。いきなり何かをしようとするのではなく、まずは小さい行動を積み重ねを始めてみると、段々と地域の中での役割が見えてきそうですね。


4年ほど前に移住してきた岩楯さんは、お節介な人に会うのがいいと言います。

黄色いハンチング帽が似合う岩楯さん

まさに先ほど訪問したLIB COFFEE IMARIのオーナーである森永さんと出会い、森永さんがいろんな方に岩楯さんを紹介してくださったことで繋がりが増え、疎外感は全くなかったとのこと。
加えて、夜は100軒ほどある伊万里のスナックもおすすめのようです。
スナックはヨーロッパで言うところのパブであり、地域のことや日本の歌を知ることができる大切な場所、と北川さんが重ねます。
伊万里を知るためにスナック巡りをするのも面白そうです。

そしていよいよ、座談会は終盤へ。

今後どんな活動をしていきたいか、という村上さんへの参加者からの質問に対し、「高校生に可能性を示したい」と強く村上さんは答えます。

就職に際して、約9割の高校生は市外に出て行ってしまうという状態を危惧しているとのこと。

伊萬里百貨店はものを売るだけでなく、伊万里の高校生に可能性を感じてもらえる場としても機能させていきたい、と仰っていました。
また、イベント単発で終わらせるのではなく、伊万里の地域資源をベースに継続的な仕組みをつくっていきたい、と村上さんは締めくくります。

伊葉さんは、「新しく入ってきてくださる方々のためにもコミュニティを維持していきたい」と一言。
内田さんは、「あくまでも商売なので、子どもたちと対等な関係でありながらも、安心して集まれる場を提供し守っていきたい」と声を大きく最後の一言を締めくくられました。

村上さんのトーク力も合わさり、これまで知ることができなかった伊万里と出会うことができたMEETUP! SAGA伊万里編。

今も昔も一緒に地域をつくる関係性を大切にしていた伊万里。
商人のまちの気質は、地に受け継がれていました。

少しでも伊万里が気になったと言う方は、ぜひ伊萬里百貨店へ。
そして残念ながら今回訪れることが叶わなかったLIB COFFEE IMARIへも足を運んでみてはいかが??

文責:NPO法人灯す屋 石橋 真太
写真:有田町役場まちづくり課 地域おこし協力隊 壱岐 成太郎

 

2022年02月22日(日)
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